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4月最終週に突入!治療方針決定について院長の考え方(ちょっとマジメな話)

2021.04.26

元気ですか?タイヤ交換でコンプレッサーインパクトレンチのありがたみを感じている、きたかた院長です。

クリニックも開院後3週経過し、いろいろな意味で落ち着いてきました。待ち時間も少しずつですが改善してきています。でも、まだまだ、システム、スタッフの配置や業務調整や増員などなど、課題はたくさんあります。より良い診療環境を提供できるよう、努めます。

さて、手術で良くなる可能性のある状況で、治療の方針決定に関するお話です。ちょっとマジメな話ですが、大切なことだと思っているので、聞いてください。

よく、患者さんから「手術した方がよいですか?」「手術しないといけないですか?」と聞かれます。

「歳だからもう手術はしたくないです」「手術なんて怖いからいやです」とも言われます。

それに対する答えは(もちろん患者さんごとに言葉は選びますが)基本的にみな同じ。

「こちらから無理に手術を勧めることはありません」

整形外科の手術適応の判断はきわめて相対的なものです。放っておくと治らないかも知れない神経障害や一部の腫瘍、高度の外傷などの特殊なケースを除けば、”絶対にやらないといけない”手術は、ほぼありません。あくまで治療の選択肢のひとつなんです。

治療の目的は生活レベルの改善であり、生き死には直接関わりません。患者さんが何を求められるか次第です。

たとえば、肩の腱板断裂。

多くの場合で明らかな怪我もなく、腱がすり減って切れます。いくら腱が切れていても、症状だけで言えば 、時間、リハビリ、注射などの保存療法である程度は症状が良くなります。ただ、切れている腱が自然治癒することはなく、長期的には切れている範囲が広がる(悪化する)ことが知られています。

なので、

保存療法(=手術をしない治療)を選択した場合、

一番のメリットは手術をしないということ。でも、症状がいったん良くなっても、切れている腱が自然に治ることはなく長期的には悪化するので、それを受け入れる必要があります。

では、手術したら?

切れている腱が修復されて治ってより長持ちさせられる可能性が高い。でも術後の痛みや安静・リハビリにかかる期間を乗り越える必要があるとともに、術後の経過で苦労をしたり再断裂してしまうリスクもあります。

膝や股関節の変形に対する人工関節も同じ。

軟骨がすり減り骨も変形して機能を損なってしまった関節に対して、なんとか痛みを和らげることを主眼とした保存療法を選択して付き合っていくのか、歩きやすくなってより良い生活を送るために諸々のリスクを許容して手術に望むのか。

要するに、どちらかの治療方法が絶対に優れているということはないのです。

ではどうするか?

医師としてできることは(治療を行うことはもちろんですが、それ以上に)判断材料となる情報を提供すること。それをもとに一緒に話し合って、最終的には患者さんに判断してもらいます。保存的に治療をしていくのか、意を決して手術をするのか。

認めたくはありませんが、人は年齢とともに体の各部位が変化しますし、いずれ命はなくなります。その流れにあらがうことはできません。そんな中で生じる症状が受け入れ難い場合に医療機関を訪れ、治療を希望されます。最終的に治療方針を決めるのは、医師ではなく患者さんご自身です。クリニックで医師とスタッフができることは、そのサポートです。

患者さんが現状や将来に対して何を求めるかによって治療方針は変わります。今の負担やリスクを回避して、症状や病態を受け入れていくか、今できる投資(=手術)をしておいて、生活の質を改善したりやりたい仕事や趣味をより長くできるようにするか、治療方法の選択は患者さんの人生における選択と一緒です。

手術をするか、しないか?どちらでもいいんです。何よりも大切なのは、医師が提供した情報をもとに今の病状と治療の選択肢を理解した上で、最終的に患者さんが自分で判断することです。

そういう意味で、医師はコンサルタントである必要があると思っています。患者さんの年齢性別だけでなく、家庭環境、職場環境、趣味、性格まで含めて、できるだけ詳細に状況を把握して人間関係を構築した上で、治療方針を話し合います。でも、何度も言いますが、最終判断をするのはご本人です。

情報もないまま手術しかないと思いこんで「手術して欲しい」とおっしゃる方。頭ごなしに「手術=怖い」と意固地になって(症状を改善できる見込みの高い手術という選択肢を聞くことさえせず)保存的に経過を見る方。こういった方々よりも、状況を理解して自分の意思で治療方針を決定された方の方が、いずれの治療方法を選択しても経過が良い気がします。

堅苦しい話になってしまいましたね…。

そんなわけで、どうしてもひとりひとりの患者さんに時間をかけてしまい、お待たせする時間が長くなってしまうことに対する、きたかた院長の全力の言い訳でした😅

注)きたかた院長はネコを飼っておりません。